有限責任事業組合(LLP)設立

有限責任事業組合(LLP)設立

LLPとは?

2005年4月に制定された有限責任事業組合契約に関する法律によって、日本版LLP(有限責任事業組合)制度が始まりました。これは、創業を促し、企業同士のジョイントベンチャーの振興、専門的な知識・能力を持つ人材の共同事業を振興することを目的としています。その特徴は、LLC(合同会社)とほぼ同じで、

  1. 出資者(社員)の全員が有限責任社員であること(出資者は出資額の範囲内でのみ会社の出した損失の責任を負います。この点は株式会社と同じです。)
  2. 株式会社のように定款を作成しますが、株式会社より柔軟な内部自治が可能であること(出資者同士の合意により、出資比率によらない損益や権限の分配が可能であり、取締役会等の監視機関が法律で必置とはされておりません。)
  3. 原則として出資者全員が事業に参画することを要すること(ただし定款で出資者の一部のみが業務執行することは可能です。) が挙げられます。

LLP設立のメリット

なんと言っても構成員課税(パススルー課税)が挙げられます。構成員課税とは、LLPの組織には課税をせず、出資者に直接課税する仕組みを言います。
仮にLLPに利益が出たときは、LLPの組織には法人税が課せられず、出資者への利益配分に対して直接課税されます。
また、LLPに損失が出た場合でも組合員に損失が帰属し、出資額を基礎としてとする一定額の範囲内で他の所得と損益通算(2人以上の所得がある時で、例えば片方の所得が黒字、もう片方が赤字の時に、その各所得の黒字と赤字を一定の順序に従って差し引き計算を行うこと)ができます。

その他のメリットとしては、LLCと同様で

  1. 株式会社・合同会社(LLC)より安価で容易に設立可能
  2. 法律上会社は個人と別人格なので、会社がたとえ倒産しても、個人は原則として出資金以上の責任を負う必要がない(組合員が個人的に保証契約を結んでいた場合はのぞく)
  3. 会社の組織設計が株式会社より柔軟にできる
  4. 組合員個人の能力に着目した会社の運営が可能(株式会社の事業の中で、個人の能力に着目した事業を移管していくことが可能)、などたくさんあります。

※なお、LLPから別組織(株式会社等)に変更したいときは、一度LLPを解散してから改めて株式会社や合同会社等を設立する必要があります。
また、逆に株式(合同)会社からLLPに組織変更したい場合も会社を解散してから改めてLLPを設立する必要があります。

LLP設立手続き

  1. 1.組合契約書に記載する基本事項の決定(※)
  2. 2.組合契約書の作成
  3. 3.出資の履行(金銭の払込・現物給付)
  4. 4.登記申請
  5. 5.官公署への届出

※LLPの事業目的・名称(「必ず有限責任事業組合」の文字をいれなければなりません。)の決定、事務所所在地・資本金などの決定、出資者(社員)の出資の目的とその価格等

組合契約書の作成はとても重要です。組織構成や権利義務関係等、事前によく協議して、文書にすることが大切なのですが、とりわけ利益の分け方(配当割合)についてはもっとも神経を費やすところかもしれません。でも、LLPは個人の能力に着目して設立されるのですから、はっきりとさせなくてはならない点です。当該分配割合を定めた合理的な理由を組合契約書に明示する必要があります。

株式会社の設立に比べ、公証人による定款認証、取締役等の選任、取締役会の開催、株式の引き受け・払い込みの調査等の手続きが不要となります。

LLP設立に要する時間

一概には言えませんが、株式会社の設立に比べ手続きの簡易化が図られておりますので、1週間~10日くらいで会社の設立が完了します。

設立(法定)費用

  • 登録免許税:6万円(登記所にて)
  • 登記完了確認:登記簿謄本(1通1000円)や印鑑証明(1通500円)の交付手数料
  • 印鑑作成:2~3万円程度

計6万円~かかります。行政書士や司法書士に会社設立を頼むときはさらに報酬分の上乗せが必要になります。
(一般に言う「1円から会社が作れる」、という場合の1円はこれらとは別の資本金のことを言います。LLPの場合、2人以上の出資者(組合員)による組合契約で設立されますので、資本金は最低2円~で大丈夫です。)