NPO法人設立

NPO法人設立

1.設立要件

  1. 活動の内容が特定の17分野に限定される(特定非営利活動法人促進法の別表参照)
  2. 不特定多数の人が自由にNPO法人の会員になれること
  3. 最低でも10人以上の社員が必要で、役員も最低でも理事が3人、監事が1人以上必要(社員との兼職は可能)
  4. 社員への配当が不可能
  5. 宗教性・政治性・暴力団関係がないこと

2.設立手続きの流れ

  1. 1. 10人以上の発起人による設立総会の開催
  2. 2.申請書類の作成(都道府県庁担当課との相談)、提出
  3. 3.申請書類の受理後、重要な書類の公告・縦覧(2ヶ月間)
  4. 4.審査(2ヶ月以内[申請受理後4ヶ月以内])
  5. 5.認証・不認証の決定、通知
  6. 6.証の場合、2週間以内に設立登記(登記後遅滞なく)
  7. 7.設立登記完了届出書や閲覧用書類を所轄庁に提出
  8. 8.毎年、事業報告書・財産目録書・貸借対照表・収支計算書・役員名簿などを作成し、所轄庁に提出

3.設立後の手続き(事業年度後の届出として、毎年以下の書類を提出する必要がある。)

  1. 事業報告書
  2. 財産目録
  3. 貸借対照表
  4. 収支計算書
  5. 前年の役員及び報酬を受けた役員の名簿
  6. 社員のうち10人以上の名簿

(以上2008年1月31日現在)

4.NPO法人の運営・経営について

「非営利活動法人」だからといって、お金儲けをしてはいけない、というわけではありません。1-4のように社員への配当が禁止されている点に注意し、役員への報酬、従業員への給与(給与を与えることは可能です。)、翌年度の事業のための資金に回すといった形を取っていくことができます。

ただし、多くの方はもうすでにご存知でしょうし、社会起業に挑戦しようとお考えの方には当たり前のことかもしれませんが、NPO法人の運営はとても大変です。
決して毎年の事業報告など(3.の1~6)が大変、というだけの話ではありません。

いかに事業を行い、お金を得るか、いかに会費や寄付を集めるか、という、資金繰りの部分が最も大変です。社会的に有益な事業を行いつつ、お金を生む仕組みづくりというのが重要であり、とても難しい点です(もしかしたら会社の運営以上に大変かもしれません)。 NPO法ができた当時はまだ、ボランティアの延長でNPOを捉えておられた方がほとんどでしたでしょうし、今活動しているNPOの多くの方もそうお考えの方がもしかしたら多いのかも知れません。

しかし、「非営利」を貫くがゆえに(その精神にはもちろん頭が下がりますが、)立ち行かなくなってしまい、現在は形だけとなってしまったNPO法人はたくさんあります。(私も昨年、ある市の20あまりのNPO法人にお手紙を差し上げたところ、3分の1近くは手元に返ってきました。)

社会起業に挑戦される方は、起業するならNPOか会社か、という点で悩む必要性は薄いのではないか、と思います。どちらにせよ(有限責任事業組合:LLPという選択もございますが)、経営者としての感覚が必要とされる点では違いはないのです。ボランティアの感覚で起業するとか、とりあえず法人の設立をしてからどんな事業をするか考える、とかでは早々に立ち行かなくなる可能性が高いといえます。

ぜひ、設立の前の段階で、当事務所にご相談いただき、一緒に「仕組みづくり」(=事業計画と収支予算)を考えさせていただけましたら幸いです。

また、起業にあたっての方法論ですが、昨今の社会情勢(大企業を中心としたコンプライアンスやCSRの動きと社会起業家の登場)や、法改正(新会社法の施行で会社が作りやすくなった点や有限責任事業組合契約に関する法律の施行など)により、NPOと会社の垣根はかなり低くなっております。 これから社会起業に挑戦される方には、当事務所では、「NPOとその関連会社(株式やLLC)をつくる」という選択肢もご提案させていただいております。詳しくは当事務所にご相談いただくか、『利益が上がる!NPOの経済学』(跡田直澄著 集英社インターナショナル)をご覧いただきたいと思います。 まず大切なのは、毎年法人を継続して存続させることです。そして、「しっかりとお金を稼」ぎ、より大規模な事業をやっていくこと、そのことが、社会起業に挑戦しようとお考えの方にはおそらく共通の思いである「社会変革、新しい社会システム作り」、へとつながるのではないか、と考えております。

5.一般社団法人について

本年(2008年)12月から、新たに一般社団法人・一般財団法人が作れるようになります。 これまで、社団(財団)法人は設立のために主務官庁の認可が必要で、公益性の判断は主務官庁の自由裁量であったため、設立が容易ではありませんでした。それが今回の公益法人制度改革で、会社並みに容易な非営利法人の設立、が可能となり、非営利活動をしていく上での選択肢がさらに増えることとなりました。また、一般社団(財団)法人は、様々な優遇措置のある公益社団(財団)法人になることができる可能性もあります。社会起業を目指す方にはあまりにも選択肢が多すぎて、どの形態で起業をするのがベストか悩まれる方も多いかもしれません。一人で悩まれておられるのであれば、お気軽にお問い合わせ下さい。一緒にベストの選択肢を考えさせていただきたいと思います。

6.共通点

  • 社員・設立者に剰余金や残余財産の分配をすることが不可。
  • 財産保有規制はない。(ただし一般財団法人のときは300万以上必要)

7.NPO法人との相違点

  • 事業の公益性の有無を問わない(公益目的事業と認定されれば税法上優遇される)。
  • 設立には2名以上でよい。
  • 定款は公証人の認証が必要であり、登記のみで設立が可能(都道府県に申請後、必要書類の閲覧の期間2ヶ月、審査期間2ヶ月が不要となる。)
  • 上記のように都道府県による監督が少ないので、NPOに比べて、社会的な信用は弱くなる、といわれている。
  • 必置機関が社員総会と理事のみで、理事会、監事、(会計監査人)の設置は任意。
  • 一般社団(財団)法人から公益社団(財団)法人への認定を受けることが可能となる。

8.一般社団法人とNPO法人の比較表

法人格名 一般社団法人 NPO法人
事業内容 公益事業・収益事業 17の特定非営利活動・その他の事業(収益事業)
利益配当、残余財産分配 不可能 不可能
設立手続き 設立登記のみ(公証人の認証も必要) 所轄庁(都道府県または内閣府)の認証後、設立登記
設立時の資金 不要 不要
社員(設立時必要な人数) 2人以上 10人以上
理事 必ず1人以上必要(理事会を設置の場合は3人以上必要)※1 必ず3人以上必要(かつ非親族要件 ※2 があり)
監事 基本的には不要(理事会設置の場合は1人以上) 必ず1人以上必要(かつ非親族要件 ※2 があり)
会計監査人 基本的には不要(大規模な法人の場合1人以上設置することもある) 不要
所轄庁 なし 都道府県庁又は内閣府
役員報酬 法律上の制限なし 法律で制限あり(役員総数の1/3以下であること)
監督 なし 都道府県庁又は内閣府
許認可 なし 認証が必要
設立難易度 やさしい 一般社団法人よりは難
設立期間 1ヶ月以内で可能 3ヶ月~6ヶ月
社会的信頼度 ほとんどなし ある程度はある
税制優遇 課税・非課税に2分 ※1 原則非課税 収益事業については課税
税率 会社と同じ 会社と同じ
寄付金優遇 課税・非課税で2分 ※1 なし
毎年度の報告 なし 国民閲覧のために毎年度所轄庁に提出
法人格取り消し なし 認証取り消しで解散
根拠法 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 特定非営利活動促進法

(以上 「新すぐわかる公益法人制度」 福島達也著 学陽書房 p194~195を参考に作成した。)

※1. a原則非課税で収益事業のみ課税型<NPO法人型税制>の一般社団法人であるか、b全所得に関して課税型<株式会社型税制>の一般社団法人であるか いずれかを選択して、税務申告をすることとなる。
aのNPO法人型税制を選択する場合は、「理事」に関して、理事及びその親族等である理事の合計数が理事総数の1/3以下でなければならない、という親族制限規制が関係してくる。その一方でa型の一般社団法人に対して寄付をする個人や法人は税制上の優遇措置が受けられる。

※2. 各役員について、その配偶者もしくは三親等以内の親族が2人以上いないこと。また、当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が、役員総数の1/3を超えて含まれないこと。・・・具体的には役員総数が5人以下の場合であれば、配偶者及び三親等以内の方は役員に入ることができない。役員総数が6人以上の場合、各役員につき配偶者及び三親等以内の親族1人を含むことができる。

9.設立の流れ

<一般社団法人の場合>

  1. 1. 2人以上の発起人が法人設立を検討し、基本的な事項を決定
    (目的、名称、主たる事務所の所在地、社員の数、事業年度、公告の方法など)
  2. 2.定款などの書類作成
  3. 3.公証役場での定款認証
  4. 4.法務局での設立登記
  5. 5.後日、登記簿謄本や印鑑証明が取得可能